YokohamaniA

アクセスカウンタ

zoom RSS 武揚伝 を読む

<<   作成日時 : 2018/01/15 22:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0



武揚伝 - 決定版(上) (中公文庫)
中央公論新社
2017-11-22
佐々木 譲


Amazonアソシエイト by 武揚伝 - 決定版(上) (中公文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



 ぶようでん、とは、榎本武揚の半生の小説である。
 最後の幕臣として箱館戦争で旧幕府軍を率い、最後まで新政府軍に抵抗した人物。
 しかし今日、その知名度は同じ戦争を戦った土方歳三に遠く及ばない。

 その原因は、京都時代から華々しく暴れまわった土方が自分の正義に殉じて戦死したのに比べ、榎本は降伏後に請われて明治政府に仕え、最終的には爵位まで賜り畳の上で死んだからだろう。
 つまり、悲劇のヒーローになり損ねたといえる。


 榎本武揚は、一介の御家人の次男坊に過ぎなかったから、太平の世であれば、いかに頭脳が優れていようとも幕府の下級官吏になるのがせいぜいであった。

 最初は官吏養成校である昌平坂学問所に通うが、そこにペリー率いる黒船があらわれ、世の中も釜次郎の人生も大きく変わっていく。

 父親が伊能忠敬の弟子であったことから、武揚は縁あって幕府の蝦夷地巡察の一行に加わることとなり、多くの日本人には極寒不毛の地と思われていた蝦夷地の状況を観察する機会を得た。

 また開明派の私塾でオランダ語を学んでいたため、その後は長崎で海軍の訓練を受け、ついにはオランダ本国留学をはたす。

 彼がひとつひとつ知識や技術を取得していく間にも、幕府は傾き、薩長は朝廷を抱き込んで攻勢を強め、武揚がオランダから最新鋭の戦艦に乗って帰国するとほぼ同時に戊辰戦争が始まった。

 この小説の白眉は、榎本武揚が旧幕府軍の船隊を率いて品川沖をあとにするシーンだろう。
 生涯ソリの合わなかった勝海舟が、地団太踏んで悔しがるくだりは痛快といってもいいほどだ。

 もちろん、後世の私たちが知る通り、箱館に拠った旧幕府軍は半年余りで新政府軍に敗れ、彼らの抵抗はただの「あだ花」、もしくは時代錯誤と受け取られた。


 しかし、この小説の面白さはストーリーではなく、ディテールにある。
 
 武揚の目で見た蝦夷地の描写は、北海道出身である著者ならではの感性が光るし、とかく美化されがちな薩長政権をちくちくと批判しているのも、その後薩摩出身者に食い物にされた歴史を知る北海道の人間としては、よくぞ書いてくれたと思う。

 また、ペリーの外輪蒸気船に始まる西洋技術のあれこれは、当時の産業史とも読めて知的好奇心を満足させる。
 
 それに、榎本の周りに集まる男たちはみな「好漢」であり、青春小説、成長小説としても十分面白い。

 歴史にIFはないというが、北海道には違う歴史があったかもしれない、そういう想像を楽しめるのも、本書を読む醍醐味だろう。






テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
武揚伝 を読む YokohamaniA/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる