2007年スイス旅行記その15~ベルニナ線とサンモリッツ

ベルニナ・ディアヴォレッツァ駅から、列車でさらに南に向かう。サンモリッツからの列車は各駅停車のローカル線なのに、朝とはうって変わって観光客であふれかえっている。天気もいいし、有名な観光路線だから、みなイタリアまで行ってパスタでも食べてくるのかもしれない。

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ディアヴォレッツァ駅から先は、荒涼とした広い谷間をゆるゆるとカーブしながら走って行く。小さな黒い湖が二つ、次いで白いやや大きな湖の横を通る。この二つの湖の間の低い土手状の部分が、ドナウ川水系とポー川水系の分水嶺であるらしい。一見何の変哲もないような土手が、ヨーロッパ大陸の分水嶺だなんて素敵すぎ~!

白い湖(ラーゴ・ビアンコ、そのまんま直訳である。もともと湖があったのかどうか、今はダム湖)のほとりの駅、オスピツィオ・ベルニナで降りる。ここから次の駅まで、ぶらぶら歩く。

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ガイドブックによれば、登山鉄道を除くと、この駅がスイスで最も標高が高い所にあるそうだ。地図では2253メートル。湖を挟んで、正面にカンブレナ氷河が見える。さっき見た氷河に比べると、弱々しくあまり見栄えがしない。

高校生くらいの一団も列車を降りる。Tシャツにジーンズと軽装だが、遠足なのだろう、先生に号令をかけられて湖畔の道をとろとろ歩き始める。しばらくすると、一組の少年少女が追いかけっこをするように私を追い越し、湖に突き出た岬を回って視界から消えた。背の高い巻き毛の少年と、長い真っ直ぐな黒髪をなびかせ、おへそ丸見えズボンの少女。世界にこれ以上楽しいことはない、というとろけそうな笑顔が眩しい。若いときは一度きり、人生を楽しんでいるのはいいことだ。

駅から2キロほどで湖が終わり、ああダムだったんだ、と拍子抜けするような低い堤体部分に到着。そこで道は山へ向かう方と、線路に沿って南へ行く方とに別れるが、見晴らしがいいという山の道へ向かう。

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サッサル・マソンの山小屋への道

ガレた岩斜面につけられた林道を登っていくが、正面から太陽が照りつけるせいか、たいした傾斜でもないのに息が上がる。そういえば、スイスに来てからずいぶん歩きなれたような気がしていたが、乗り物で上がってふもとへ歩き出すルートばかりだった。こんな登りのうちにも入らないようなところでゼイゼイしているとは、まったく自分が情けない。しょっちゅう足を止めながら何とか2キロ弱を登りきって、サッサル・マソンの山小屋到着。

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この山小屋兼レストランは谷に突き出した崖の上にあり、目の前に鳥が翼を広げたようなパリュ氷河、南にイタリアへ続く谷が望める、景色のたいへんいいところである。苦労して辿りついた甲斐があるというものだ。しばらくテラスで景色を眺めたあと、さて何か食べようかと建物の中を覗くが、メニューを書いた黒板が出してあって営業している風ではあるものの、誰もいない。お客がいないので奥に引っ込んでしまったのだろうか。このレストランで何か食べるつもりだったのに、どうやらアテが外れたようだ。

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つづら折りのベルニナ線とアルプ・グリュム駅

はるか眼下に見えるアルプ・グリュム駅まで、谷を下る。南斜面は一面のお花畑で、色とりどりの花が短い季節を満喫するかのように咲き誇っている。こんな景色に出くわすたびに、もっと花の名前をたくさん知っていたらと思うが、何度本を見ても頭に入らないんだよね。どうも私の脳はそういうことに向いてないようだ。

アルプ・グリュムの駅には、ハイキング客がたくさん列車を待っていた。湖を離れてから誰とも会わなかったのに、みんなどこを歩いていたのだろう?

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帰りの列車まで一時間弱あったので、駅の中のレストランで食事を取る。蓋付きの壺のような入れ物によそわれたグラーシュ・ズッペ(スープ)と白ワイン。グラーシュとは何ぞや?見かけも味も小学校の給食で出たソーセージのトマト煮という感じだ。マイルドな味で、お腹がぺこぺこなのでとても美味しく感じる。

この駅からもパリュ氷河がよく見える。さっきの展望台の迫力には及ばないけど、見上げるような位置の氷河から幾筋も沢が落ちていて、奥行きのあるいい景色だ。

アルプ・グリュム駅は線路が谷底からつづら折りで上がった所にあるため、車体の見えるずいぶん前からゴトゴト音が聞こえ、しばらくしてからやっとカーブの向こうに車体が見えてくる。やはり混んでいるが、何とか窓側の席を見つけて座る。今日たっぷり半日かけてまわった所を、列車はほんの数十分で通り抜ける。もう一生ここに戻れないと思うと、充実した中にも悲しい気分だ。

まだホテルに帰るには早い時間なので、終点のサンモリッツまで行ってみる。駅舎はサンモリッツ湖畔にちんまりとあり、市街地は急な坂を10分ほど上った所。駅のまわりは閑散としていたが、ここまで来るとイタリア人やドイツ人の団体がうじゃうじゃいる。が、しかし。街の空気がちょっと違う。石畳の細い道路に面して、プラダやグッチやらのブランドが控えめながらも軒を連ね、私セレブです、といったマダム達が「そぞろ歩いて」いる。なるほど、高級リゾートといわれるわけだ。ハイキング帰りの私は、いでたちからして明らかに場違い。何となく気がそがれて街並み見物もそこそこに湖まで坂を下り、湖畔の散策路を歩いて駅に向かう。

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駅とは反対側の湖岸からは、斜面に開けたサンモリッツの街が一望できる。しかし、いたるところクレーンがにょきにょき、一番目立つリッツ・カールトンホテルに至っては、すっぽりシートに覆われ前衛芸術のようなありさま。街中の石畳もはがして補修しているところが何箇所かあったし、どうやら街じゅうシーズンオフの大改装中らしい。

湖畔には立派な遊歩道があり、散歩やランニングをする人がたくさんいる。お揃いのジャージは高校生か、実業団の選手だろうか。黒人ばかり20人ほどで走っているグループは、アフリカのどこかの国のナショナルチームだったりして。こんな景色のいいところで合宿なら、私も喜んで参加するだろう(走るのは苦手だけど)。

列車でサメダンに戻る。お風呂のあと、途中のコープで買った赤ワインの小瓶とビュントナーフライシュ(干し牛肉の薄切り)、りんごなどで簡単な夕食を取る。ホテルのレストランでちゃんとしたご飯を食べるべきかと思うが、お風呂に入ってしまうと面倒なのだ。赤ワインが安すぎたかちょっと気分が悪くなり、横になる。

しばらくうとうとしていたが、夜9時前になって突然廊下が騒がしくなる。団体客がチェックインしたようだ。部屋割りでもめているのか酔っ払いなのか、ずっと廊下でわいわいやっている。うるさいなあ。言葉のトーンからして東洋人ではないようだけど、一体どこの団体だろう。いい加減我慢できなくなり、ドアを開けて文句でも言おうか、英語で何て言うんだっけ?と考えているうちに、ようやく静かになる。はた迷惑な人たちだ。

旅ももうじき終わり。あと一晩でスイスともお別れだと思うと、寝るのがもったいないような…zzz。

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