2007年スイス旅行記その3~ピラトゥスへ

時差のせいか、緊張しているのか、朝5時に目が覚める。朝食はAM6:15からと張り紙があったので(日本のビジネスホテルより早い?)、それまで荷造りしたり日記を書いたりして過ごす。

7時前に食堂に行くと、日本人のグループが何組もいた。みな私の親のような年代の人々だ。女性ばかりだったり、数組の夫婦だったり。彼らはツアーではなく(ツアーならもっと立派な所に泊まるよね)、個人旅行で来ているようだ。それぞれに行程が違うが、「貸し別荘に泊まる」という人が多かった。まずサンモリッツで一週間、ツェルマットに移動して一週間、と全部でひと月近く滞在するらしい。休みもたくさん、資金もたくさんあって、羨ましい限りである。

ホテルをチェックアウトして、駅に向かう。荷物窓口を探して、今日の目的地へスーツケースを送る。このサービスは素晴らしい。これがなければスイスに一人で来ようなどとは思わなかったかもしれない。

AM8:35の電車でルツェルンへ向かう。総二階建てのキレイな車両で、一等車は広々、ガラガラである。もちろん、二階席に座る。

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チューリヒを出発するといきなりトンネルで、少なくとも数キロは続いたように思う。トンネルを出ると左にチューリヒ湖。しばらくして、今度はツーク湖が見える。佇まいは洞爺湖に似ている。湖の対岸には、上部が雲に覆われているものの、高そうな山が聳えている。地図を見ると、リギ山のようだ。行ってみたかったが、今回は割愛(って次回があるのか?)。ほどなく、ルツェルン中央駅到着。

ルツェルンは、街歩きが楽しそうな街である。まずは超有名なカペル橋を目指す。駅からすぐのゼー橋に出ると、右手がフィーアヴァルトシュテッター湖、左にカペル橋である。水は緑色に澄んで、所々に白鳥がいる。

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カペル橋は1993年に火災に遭ったらしいが、元通りに復元してあった。橋の途中で柱の色や質感が変わるので、そこが消失した部分との境目なのだろう。木の橋というのは歩いていて気持ちがいい。

ふと外を見ると、町の背景に切り立った岩山が。あれこそはピラトゥスに違いない。本当はもうしばらく市内をぶらぶらする予定だったが、天気のいいうちに山に登らなければ、というわけで、駅前からトロリーバスに乗って、ピラトゥスへのゴンドラリフト乗り場を目指す。

バスは路線がわかりにくいのではと心配したが、さすが観光地、ピラトゥス行きはこれ!と停留所にもバスにも示してあって、字さえ読めれば大丈夫だった。10分ほどバスに乗り、降りてからさらに10分くらい坂を登るとゴンドラの駅舎がある。今日もかなりの暑さで、坂道がつらい。

切符は、山頂を経由して反対側の登山鉄道に降りるものを買った。スイスパスがあるので定価の半額である。

ゴンドラは普通スキー場で見かけるものと同じで、空いていたので一人だけで乗せてくれた。乗り場は市街地の外れで、動き出すといきなりハイジの世界。中間駅を過ぎると、辺りに霧が出始めた。山頂も見えなくなっている。うーん、失敗だったかなと思うが、風が強いのでまた天気も変わるだろう。霧の中で、遠く近く不思議な鐘の音が聞こえる。くぐもったような、初めて聞く音色で、輪唱のように次から次へと鳴り響く。何だろう?ふいに、林の中に牛の群れが見える。そうか、カウベルだ!深い霧とカウベルの音。幻想的~!

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ゴンドラは長く、20分はたっぷり乗っていたように思う。山の際まで来て、ロープウェイに乗り換える。このロープウェイが、筆舌に尽くしがたい凄さ!垂直に切り立った岩肌を、なめるようにほぼ真上に上がっていく。どこを見ても常識からかけ離れた傾斜で、自分が真っ直ぐ立っているのかどうかもおぼつかない。度肝を抜かれるという言葉があるが、私はまさにその状態だった。なるほど「魔の山」といわれるわけだが、ここにロープウェイを架けようと思った人もスゴイよね。

ピラトゥスの山頂は意外と広く、二つのピークに挟まれてテラスと二つのホテルがあった。気がつくと、ひどく寒い。それもそのはず、下界から一気に2000メートル峰へ上がったのだ。慌ててウィンドブレーカーを着込む。アジア人はダウンジャケットで完全防備の人も少なくない。雲は切れたりまた厚くまとわり付いたりで、景色は切れ切れにしか見えない。雨じゃないだけましだろう。

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片方のピークに登ってみる。きちんと階段があり、その気ならハイヒールでも山頂に立てる。時々雲が切れると、眼下にルツェルンの街が見える。湖のほとりにレースのように広がって、市街地はまるで宝石箱だ。湖が眩しいばかりに輝いて、下界はとても暑そうである。

広場を挟んだ反対側のピークにも行く。こちらも道はちゃんとついているが、よりワイルドで登りもきつい。途中の崖のくぼんだ所に、男性の横顔のレリーフが嵌め込まれている。ドイツ語なのではっきりしないが、「GEOLOGIE DES PILATUS」と書いてあるから、ピラトゥスの地質を調べた人なのだろう。こちらの山頂は三角点のようなものがあるが、あまり人気がない。湖とリギ山がよく見えるはずだが、雲が居座ったままで、諦めて下に降りる。

途中、登ってきた老人とすれ違う。彼のまわりにはカラスのような黒い鳥が何十羽といて、一人ヒッチコック状態である。
すれ違いざまに一応「こんにちは」と言うと、彼はにこにこしながらポケットから豆のようなものを出して、ためらう間もなく私に握らせた。と同時に、黒い鳥が私に向かって大挙して押し寄せてきた!どうやら、彼はその豆のようなものを餌として撒いているらしい。彼がそれをぱっと空に放つと、鳥が曲芸のように何十羽と空中を飛び回る。私も同じようにやってみた。豆と思ったものの正体は、黒いレーズンであった。老人はにこにこしながらまたゆっくりと登って行った。すべて霧の中の、不思議な体験だった。

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