アルスラーン戦記 を読む

 世の中にライトノベルというジャンルがあることを知ったのは、ずいぶん大人になってからだ。ティーン向けのファンタジーや戦記ものをさしており、軽く読める、という意味なのだろうが、「設定が荒唐無稽でいい大人が読むには気恥ずかしいような」というニュアンスが感じられる。
 まさに玉石混淆のジャンルだけど、時々「玉」が混じっていて、話題になったりアニメ化されたりする。近年の「十二国記」のように、筆者の力量によっては、大人が読むに足る上質なエンターテイメントだったりするわけで、やっぱり食わず嫌いはいけないなぁ、と面白そうなものは読むようになった。


王都炎上―アルスラーン戦記〈1〉 (光文社文庫)
光文社
2012-04-12
田中 芳樹


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 アルスラーン戦記、その名の通りパルス国王子アルスラーンの戦火をくぐり抜けながらの成長譚。
 物語の舞台は、仮想の中東~中央アジア風世界(作者はペルシャをイメージしたらしい)。そこに西から異民族が侵攻してきて、アルスラーンの国は存亡の危機に立つ。

 この異民族、名前がモンフェラートにボードワン、イノケンティス(教皇インノケンティウスのもじり?)って……第四回十字軍のメンバーじゃん!これって十字軍をイスラム側から見た話!?
 9.11同時多発テロのあと、ブッシュが「現代の十字軍だ!」といって多国籍軍を繰り出したが、その時にキリスト教徒はまだそんな世迷言を信じてるのか、と暗澹たる気分になった。
 というのも、十字軍は「聖地回復」というお題目だったが、当時の後進国だった西欧が豊かなオリエントに略奪行に行った、というのが実際のところで、一時は現在のイスラエルに拠点を築くものの、結局はイスラム教徒に地中海世界から追い出されて終わる、という甚だカッコ悪い結末なのだから。
 ちなみに第四回十字軍は、イスラム教徒をやっつけるどころか、同じキリスト教国の東ローマ帝国を攻撃しただけという(法王庁的には)失敗作だった。
 話が逸れたが、作者があえて十字軍になぞらえたとすれば、作品中の異教徒も同じ運命を辿るのだろう。

 少年アルスラーンには、水戸黄門よろしく知恵者と力自慢の従者がついている。物語にはお決まりの美女や伊達男もちゃんといて、彼らの丁々発止の掛け合いが面白い。登場人物が武芸の達人ばかりなのも、「イリアス」か「必殺仕事人」と思えば納得。
 実のところ、読了した二巻までの話は、起承転結の起が終わって承に入ったばかり。今後、国王一族はそれぞれどう動き、どうやって国に平和と取り戻すのか。出自が怪しまれるアルスラーンの命運やいかに……ってタイトルになってる本人が、最後まで残らないわけないけど。
 ファンタジー要素は少ないが、「魔法」の範疇に入るようなキャラも出てきて、ただの戦記ものでは終わらなさそう。
 
 本書は借り物。大人になると趣味も多種多様になって、自分の好みに合う本を勧めてくれる人はなかなかあらわれない。その僥倖に感謝。




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