信州の旅 一日目
久しぶりに関東脱出。
今回の目的地は、信州の鎌倉と言われる別所温泉。
なんと日本武尊が開湯し、枕草子にも記載があるほど古いのだとか。
近くには国分寺跡もあるくらいだから、信州でもっとも早くから開けた地方なのだろう。
黒猫家に寄って両親を乗せ、千曲川左岸ののどかな丘陵地をドライブしながら西へ向かう。
八ヶ岳連峰の北端、蓼科山はまだ雪が残っている。
小一時間ほどで、別所温泉に到着。
宿にチェックインして、温泉街見物に出かける。
別所温泉は桜の盛り。
まずは別所温泉随一の名所、北向(きたむき)観音へ。
平安時代初期に慈覚大師が創建したとかで、先の住職が比叡山の天台座主になったほど由緒あるお寺らしい。
北向観音の名前の由来は、その名の通り、ご本尊の千手観音が北向きに安置されているからだそうだ。
長野の善光寺と向かい合う位置にあるため、両方お参りするのがよいらしい。
手水舎の水は、これまたビックリ、温泉・・・しかも源泉100%。
成分分析表の掲げてある手水舎なんて、初めて見たわ。
散策には少し肌寒い気温だったので、お湯の温かさが心地いい。
境内には愛染(あいぜん)カツラの木も。
「愛染かつら」の作者が別所温泉に泊まってこの木を眺めているうちに着想が浮かんだそうで、映画の大ヒット後は一躍有名観光地になったんだそうな。
今でいう「聖地巡礼」のはしりかな?
温泉街は道行く人もほとんどおらず、賑わいには程遠い。
いわゆる旅館やホテルが軒を連ねるという風景ではなく、普通の山間地の住宅街に、温泉宿が点在している感じ。
ちゃんと手湯や足湯もあるのに温泉の風情に乏しいのは、湯気がモクモクしていないからかもしれない。
さて、今夜のお宿。
今回は「黒猫両親の金婚式のお祝い」という名目だったので、フンパツして格式・風情のありそうな温泉宿を選んだ。
大正時代に宮大工が腕を奮って建てたという登録有形文化財の建物で、今年で創業100年。
1500坪の敷地の中に、宿泊棟や温泉棟が点在している。
各建物は渡り廊下でつながっているんだけど、壁・・・ないよ???
大浴場も渡り廊下の途中にあって、部屋から浴衣一枚でここに来るわけ?と思ってしまう。
四月でもかなり寒いけど・・・。
部屋へ案内してくれる仲居さんに、思わず質問。
「この渡り廊下、冬も吹きさらしのままなの?」
仲居さんはちょっと困ったように
「そうですね~。でもこの辺りは信州でも雪の少ない地方なので、廊下に雪が吹き込んで歩けないようなことはないですよ」と言う。
そういう問題じゃないから!!
なんか、嫌な予感・・・。
お部屋は離れの二階建ての一階、次の間つきの純和室。
予想通り、激寒~

一応コタツがしつらえてあるけど、北海道の常識ではありえない室温なのだった。
あとで探してみれば、目立たないようにヒーターが設置されていたけど(もちろんすぐスイッチ入れた)、仲居さんが何も説明していかなかったところをみると、四月はもうコタツ以外に暖房など必要ない、という判断なのだろう。
この辺の人たち、ほんと寒さに耐性あるわ~。
とにかく温泉、温泉。
お風呂は大浴場が二か所、露天風呂が男女各一か所。
明るいうちに露天風呂に行ってみる。
これも、渡り廊下をえんえんと歩いた先。途中段差もあって、脚の悪い人はダメだわ。
お客はほとんど80代以上だけど・・・。
女風呂は眺望が限られるので、あまり開放感もないけれど、やっぱり露天は気持ちいい~。
しかも静か~。
野鳥さえずりが心地よい。
大浴場は、ステンドグラスのある大理石風呂と、伊豆石(伊豆若草石、ちょっと緑系)を使った若草風呂のふたつで、時間で男女入れ替え。
設備は古いけど、お湯はすべて源泉かけ流しでほんのり硫黄の香り。
混ぜ物をしていない証拠に、お湯の注ぎ口に飲泉用のコップが置いてあった。
夕食はお食事処で。
信州の山海(・・・と言いたいところだけど、海はない)の珍味が並ぶ。
旅の楽しみは、温泉と食に尽きる。
未知の味わいと、手の込んだ調理法。
座っているだけで料理が運ばれてくるのは、主婦にとっては無上の贅沢だ。
寝る前にも温泉。
やっぱり夜はかなり寒く、パジャマの上に浴衣と半纏を着込んで大浴場へ。
風邪ひいたらどうしよ~・・・

☆おまけ☆
今回のベストショット。
古びた木造建築に、桜はよく似合う。