秋の旅 二日目
鳴子温泉から、県境を越えて山形県へ。
去年訪れた鳴子峡を通り過ぎ(シーズンオフでガラガラ)、「トレすご」をするために堺田(さかいだ)という駅に寄る。
あ、トレすごっていうのはJR東日本のアプリにある、トレインすごろくのことね。
「駅の周辺でボタンを押すと駅名を集められる」という機能があって、目下お出かけの度にあちこちの駅に立ち寄っている(車なのに!)。
五十にして天命を知ったはずなのに、一体私は何をしているのか・・・


何のヘンテツもない田舎駅なんだけど・・・
「堺田」とはまさしくあるものの境界なのであった。

ここは太平洋と日本海の分水嶺

奥羽山脈のただなかに在って、標高はたったの338メートルという、分水嶺ファンにとってもテツにとっても要チェックな場所。

看板の後ろには、ご丁寧に水路まで。
ミニ鳥居のほうから流れてきた水は、石碑の手前で左右に分かれていく。
試しに葉っぱを浮かべてみたが、石碑の裏でしばらく漂った後、そこで何か決心したようにあるものは日本海側へ、あるものは太平洋側へとゆっくり流れていった。
人生も、分水嶺のような選択の連続なのだろう、と静かな流れを見て思った。
この道は、出羽街道中山越という古ーい時代からの街道。
まっすぐ西に向かえば新庄、南西に下れば尾花沢。尾花沢へのルートは松尾芭蕉も通った奥の細道だ。

尾花沢はそばの産地で、谷あいのそば畑はちょうど花の季節。
あと数ヶ月で新そば食べられる、楽しみだ~。
尾花沢市街の手前からまた山間に入り、細い谷を上り詰めると、そこが「銀山温泉」。

大正から昭和初期のレトロな木造建築が立ち並ぶ。

ここは「おしん」で泉ピン子が働いていたという設定でロケが行われた「能登屋旅館」。

各旅館の外壁には、カラフルなパネルが嵌まっている。
これは左官が漆喰にコテで描いた「鏝絵(こてえ)」というもので、季節の風物や屋号の意匠をあしらい、ウィットに富んだデザインのものもある。
銀山、というだけあり、温泉街の裏山には鉱山の遺構があり、遊歩道が延びている。

疎水坑口という坑道跡。
入り口から10メートルほどまでしか入れないが、支保もないのに形がキレイに残っている。

少し先には滝も。
滝の下には大きなスーツケースを引きずった観光客もいた。
コインロッカーとかないのかな?この温泉地には。
散策路はずっと先まで続いているが、未舗装をガシガシ歩ける靴ではなかったので、ここで終了。
おしんのほか吉永小百合のJR東日本のCMでも使われていたから、年配の観光客が多いかと思いきや、若い子多数、それも男子グループ多し!
若い男の子、なんで連れ立ってこんな山奥の温泉に来るの?と思って検索してみれば、どうやら「アニメの聖地」であるらしい。
そこだけ行列になっていたテイクアウトの飲食店は、登場人物が食べた店だから・・・はあ~、なるほど。
温泉街は谷のどん詰まりにあるため、近くに駐車場スペースがなく、500メートルほど離れた場所に強制的に停めさせられる。
車に戻るころには、下界から次々とやって来る車で渋滞。
尾花沢でそばを食べようと市内へ向かうが、さすが日曜日、12時前というのにめぼしい蕎麦屋はどこもすでに行列だった。
車の半分以上は仙台、宮城ナンバー。
山形のほうが美味しいものたくさんある感じがするもんね。
急に疲れたのでとっとと帰ることにして、道の駅でさくっと「芋煮」。

コロナで我慢しまくりだった反動で、この秋はどこも混雑しそう・・・(GoToあるし!)

☆おまけ☆


温泉街には手湯や足湯がある。
でも、キョーレツに熱い・・・。
みんなわりと平気な顔で足湯に浸かっているので、きっとこれが東北標準なのだろう。

温泉街の放水銃。
木造旅館ばかりだし、消防車も入れないほどの道幅だから、こういうものが必要なんだね。
レトロな木造旅館は憧れるけど、火事は怖いし、足音や家の軋みが気になりそうだから(寒そうだし!)、やっぱり泊まりに行ってはみないかな・・・
